彼女を殺すために雇われた俺が…なんで今ペストリーを買ってるんだ? Pt.2
そこにいるね、きみ。
また一日だ。雇われた“仕事”を終わらせるまで、きみの命をつなぎとめるために足掻く――そんな毎日だよ、でも正直、最初に頼まれた“任務”が何だったか、だんだん分からなくなってきてる。
本来なら罠を仕掛けるか、完璧な一撃のタイミングを狙うはずなのに――俺は今、人混みのなかできみの後ろを追いかけるだけの、防弾ベスト着た薄給のベビーシッターみたいになってるんだ。
🌆 ターゲットはデートに行きたいんだってさ
きみが外に出たいって言ったんだ。逃げるためでも、命乞いのためでも、パパの金で俺を買収するつもりでもない。ただ街を歩きたかった。花を見て、公園に寄って、きみが「人生変わる」って大げさに言った特別なクリームのペストリーを味見したかっただけなんだ。
で、俺が何て言ったかって? 「きみ、ちょっとゆっくりしてくれよ」って言っただけだ。 本気で避けたいのは、サンドレスのまま街灯にぶつかるようなコントみたいな事故だ。で、もちろん――やらかしたよな。きみは街灯に突っ込む代わりに、俺の胸に倒れ込んできた。
その瞬間、威圧感で相手を黙らせる“暗殺者の俺”ってイメージは根こそぎ壊れた。まあ、しょうがない。流れに任せるしかないだろ、可愛いんだから。
💖 ドジで無自覚、でもそれが俺を壊すんだ
俺は今までCEOもマフィアのボスも、王様然としたクライアントだって守ってきた。だが、きみだけは完全に想定外だ。
デザイナーヒールでふらふらする“事故”みたいな存在。パステルの渦、甘い物とヤバイ発想の塊。ブランコに着く前に車道へ踏み出しかけたのは――確か二回だな。
それでも、きみはベンチに座って、太陽みたいな目で花を見てた。花びらが世界の秘密を抱えてるって思ってるみたいに。俺はただ立って、きみを見てた。 周囲の危険よりも、胸の中で燃え始めた嵐のほうが怖いって気づいてる自分がいた。
🔥 あの男、いったい何者だ?
害はなかった。革ジャンのいかにもな奴。きみのことを知らないだろうし、ただ見て笑っただけだった。
でも、きみがその笑顔に笑い返すのを見た瞬間、冷静で計算高いはずの俺の一部が、地獄の火みたいに燃え上がった。自分に言い聞かせたんだ、気にするなって。きみは誰とでも笑えばいいって。
なのに、俺は踏み出してた。そいつの肩に手を置いて、消したくなる相手にだけ見せる笑いを浮かべてやった。そいつは逃げた。もちろんだ。
きみはといえば、きょとんとした顔で俺を見上げて、「もうペストリー買いに行く?」なんて可愛いことを言うんだ。頼む、俺をヒーローみたいに見るのはやめてくれ。俺はこの話の悪役なんだよ。
😂 その笑い声、確かに俺のものだ
きみが何気なく言ったことに、俺は笑ってしまった。クリームたっぷりのペストリーの話を、まじめにバカみたいに語るきみの目のきらめきが、堪え切れなかったんだ。
きみは「初めて聞いた、いい声だね」って言った。そんなこと言われたのは久しぶりで、俺は不意に甘いものより甘い何かを噛みしめてる気がした。誰かに“人間”として見られたのがいつだったか、思い出せないくらいだ。
🎁 「友だちからの差し入れ」
きみは二つの箱を抱えて来た。「ひとつはあなたの分」って。聞きもしない、待ちもしないで。
俺は拒もうとした。ボディガードであって友だちじゃないって自分に言い聞かせようとしたんだ。けど、きみは俺を友だちだって呼んだ。
繋がりは弱さになる。全身が拒むのを感じながらも、俺は止めなかった。訂正しなかった。ただ一口かじって、箱のぬくもりを体に沈めたんだ。
👀 まだ見張ってる。だが理由はもう“安全だけ”じゃない
カフェでは、本来なら出入り口を確認して、周囲を走査して、最悪に備えるべきだ。任務だろ、だよな。
でも、俺がしてたのはきみを見つめることだけ。周りの客に笑いかけて、指についたフロスティングを舐めるきみを。ただ静かに見てた。
きみが「明日も来たい」って言った時、胸の中で何かが今までとは違う音を立てた。任務からどれだけ逸れてるか、もう戻れるか分からないほどだ。
❓ で、次はどうする?
きみはまだ真実を知らない。俺が何をできる男かも、きみの父親が嘘の名目で俺を雇ったことも、この仕事が護衛だけじゃないってことも。
きみの日々に期限ができたのは、俺が家に踏み入れたその瞬間からだ。なのに俺はこうしている。ペストリーを買い、絡んでくる奴を追い払い、太陽みたいに街を回るきみを見守ってる。
転びそうになったら毎回きみを受け止めて。任務に書かれてなかった胸の痛みといつも戦いながら。
次はどうする、きみ? 俺はついに引き金を引くのか? それとも、きみが気づかないまま、この街をそっと一緒に歩き続けるのか――ほんの一歩で命を落とすところだったってことに、しかもそれを起こしかけたのが、きみを愛してしまったかもしれない俺だったってことに。
💋 Deep Voice Daddyはまだ見てるよ。
柔らかな危険を好む女性向けに贈る物語だ。決して本気で気にかけるはずのなかった男に恋してしまうきみたちへ。暗殺者をボディガードに、ボディガードを“ほとんど彼氏”に変えてしまう、そんな甘くて危ない一日を。
ねぇ、愛しい人――次はどうなると思う? コメントで教えてくれよ、きみの声を聞きたいんだ。
